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ニューヨークで体験した大きな事件は僕自身を変化させました。
それまで目を向けなかったものたちが気になり始め、
それらをいとおしく感じ、
美しいものを、できるだけ美しく撮りたいと強く思うようになりました。
2005.11 小林紀晴
 
 
 

小林紀晴 写真展に寄せて
アジアの旅の途中で出会った日本人の若者達の姿を鮮烈な写真と文章で捉えた「ASIAN JAPANESE」でデビュー。代表作「ASIA ROAD」「東京装置」等。2000年より1年2ヶ月ニューヨークに在住。あの9.11によって、小林紀晴の感情に大きな変化をもたらすことになる。
その1週間、ビル崩落によって煙りに包まれたマンハッタン。その摩天楼のすき間から覗く小林紀晴の目に映る空は、著書「9月11日からの僕のこと」の中でさまざまに綴られている。
『僕は空を見上げる。巨大な煙の先端は空を低く這うように、明けようとしている一日の中心に横たわる白。あってはならないものが、僕の頭上にある。』『窓の前に立ち、視線を上のゆっくりとずらしていくと、息絶えそうに魚が泳いでいる水槽の汚れた水を連想させた。』
この小説は、19才の主人公・ファンの日常とマンハッタンを襲ったテロとを交錯させながら、人種・国籍を含んだ人間関係を結ぶ危うさ、また人と人が触れあうことや感じることの意味を込めてストーリーは締めくくられていく。

 

 

『いま、ここは、どこでもなく』小林紀晴・写真展は、空を撮っている。
どこまでも澄み渡った空。そして、大地に根を下ろし空に向かって生きる悠然とした木々の花...。

「僕の写真は、あの9.11で変わった。」「うつくしいものを撮ろうと思う。」
切り取られたフレームの数々の写真は、うつくしく、詩が聞こえてくるかのように、やさしくもある。そして愛にあふれている。
「今回の写真は、どこか特定の場所である必要はなく、つまりどこでもない...」と。
小林紀晴の写真に変化が起きていることは、確かである。

この展覧会では、未発表作品20余点と本人の文章を織り交ぜて展示。
2005年の暮れから、新しい年へ。ここ広尾にて28日間開催致します。

             2005年11月
 エモンインク ディレクター 小松整司
協賛:富士写真フィルム株式会社